結論から言えば、90年代のサッカーユニフォームは「ブロークコア」というファッションの広がりによって、古着ではなくコレクション品として評価される時代になりました。状態の良い1枚であれば、思いがけない金額がつくこともあります。
ブロークコアとは何ですか?
ブロークコア(Blokecore)とは、サッカーユニフォームを普段着として着こなすファッションスタイルのことです。イギリス英語で男性を指す「Bloke」と、〜らしさを意味する「Core」を組み合わせた造語で、1990年代から2000年代初頭にサッカー観戦を楽しんでいた英国人男性の着こなしに着想を得ています。
レトロなユニフォームにデニム、スニーカーを合わせるのが基本形です。2021年頃にSNS上で使われ始めた言葉ですが、一時的なブームで終わらず、いまでは定番の着こなしとして定着しています。
要点を先に一覧にします。
| 項目 | ブロークコアの要点 |
|---|---|
| 意味 | サッカーユニフォーム(ゲームシャツ)を普段着として着こなすファッションスタイル |
| 語源 | 英国英語で男性を指す「Bloke」+「〜らしさ」の「Core」 |
| 元になった着こなし | 1990年代〜2000年代初頭、英国のサッカーファンがスタジアムやパブで見せた「シャツにデニム、スニーカー」 |
| 広まった時期 | 2021年頃からSNSで拡散。一時的なブームで終わらず定番化 |
| 定番の組み合わせ | レトロなシャツ+ストレート〜ワイドのデニム+レトロなランニングシューズやテラス系スニーカー |
| 選ばれるシャツ | 90年代〜2000年代前半。身幅が広く生地に厚みがあり、胸に企業スポンサーが入ったもの |
| 向かないシャツ | 現行の細身モデル、無地に近いデザイン、ぴったりサイズ |
| 買取での位置づけ | 当店の実績では1990年代の当時物が中央値10,000円(2,000〜25,000円)。ブロークコア需要が90年代物の評価を支えている(買取相場) |
なぜ「ブロークコア」という名前なのですか?
「Bloke(ブローク)」はイギリス英語で「男」「あいつ」を指す、ごく日常的な言葉です。気取らない普通の男性、というニュアンスがあります。そこに「〜らしさ」「〜的なもの」を意味する「Core」が付いて、Blokecore=「英国のごく普通の男の格好」という意味になります。
名前が示すとおり、このスタイルの元にあるのはランウェイのファッションではなく、90年代のパブやスタジアムにいた人たちの実際の服装です。応援するクラブのシャツを着て、デニムを履いて、スニーカーで出かける。当時は誰も「スタイル」だとは思っていなかった格好が、30年経って名前を与えられた——というのがこの言葉の成り立ちです。
日本語では「ブロークコア」のほか「ブロークンコア」と表記されることもありますが、同じものを指しています。英語表記は「Blokecore」または「Bloke Core」です。綴りや表記が揺れているのは、それだけ新しい言葉だという証拠でもあります。

なぜ90年代のシャツが選ばれるのですか?
デザインの自由度・スポンサーの時代性・現存数の少なさという3つの理由があります。現行モデルにはない当時ならではの価値が、いま再評価されています。

デザインの自由度が高かった
90年代のユニフォームは、いまでは考えられないような大胆な柄や配色が採用されていました。生地に織り込まれた幾何学模様、蛍光色に近い差し色、クラブごとにまったく異なる意匠。現代のようにブランドごとのテンプレートに沿ったデザインではなかったため、1着ごとの個性が際立っています。
スポンサーロゴが時代を映している
90年代のスポンサーには、いまでは見られない企業名が並びます。フィオレンティーナの胸に輝いた「Nintendo」、エバートンの「NEC」、マンチェスター・ユナイテッドの「SHARP」。当時の日本企業が欧州サッカーを支えていた時代の記録でもあり、これ自体がコレクションの対象になっています。
実際に当店で取り扱った2枚も、胸のスポンサーがそのまま年代の手がかりになっています。


生産数が限られ、現存数が少ない
当時のレプリカユニフォームは、現在ほど大量に生産・流通していませんでした。さらに30年近い年月のなかで多くが失われています。状態の良い個体は年々見つけにくくなっており、これが価値を押し上げる要因になっています。

ブロークコアは「ダサい」と言われることがありますが、実際どうなのですか?
言われます。そして言われる理由もはっきりしています。サッカーのユニフォームは本来スポーツウェアで、街で着るための服ではありません。光沢のあるポリエステル、大きな企業ロゴ、蛍光色。普段着の文脈に置くと浮くようにできています。
ただ、その「浮く」ことこそがこのスタイルの中身です。ブロークコアは、スポーツウェアを本来の場所から外して着るところに面白さがあります。きれいにまとまらないから成立している、という言い方が近いと思います。
それでも野暮ったく見えるとしたら、原因はシャツではなく合わせ方にあることがほとんどです。実際に着てみて分かったのは次の3点でした。
| 失敗しやすい点 | どうするか |
|---|---|
| サイズがぴったりすぎる | 1〜2サイズ大きめを選ぶ。体の線が出ると運動着に見える |
| 下も派手にする | パンツと靴は落ち着いた色で止める。主役はシャツ1点だけにする |
| 上下ともスポーツ用でそろえる | ジャージ以外を合わせる。素材の違う服とぶつけるほうが服に見える |
下の写真は、ボカ・ジュニアーズのシャツにワイドパンツとキャップを合わせたものです。シャツ以外の色を絞ると、それだけで運動着には見えなくなります。

なお、査定の観点では評価は分かれません。ダサいと思うかどうかは着る人の判断で、シャツの価値とは別の話です。当店が見るのは年代・クラブ・状態・マーキングの4点です。
どんなアイテムを合わせるのが定番ですか?
デニムとスニーカー。この2つが基本形です。ユニフォームという主張の強い一枚を、あえて日常的なアイテムで受け止めるのがこのスタイルの考え方です。
| アイテム | 定番 | 理由 |
|---|---|---|
| ボトムス | ストレート〜ワイドのデニム | 90年代当時のシルエットに近い。細身より当時感が出る |
| 足元 | レトロなランニングシューズ、テラス系スニーカー | 当時スタジアムで履かれていた系統 |
| アウター | コーチジャケット、ハーリントン、ナイロンのトラックトップ | 英国のスタンドの空気に近い |
| 小物 | キャップ、マフラー(クラブスカーフ) | 応援グッズがそのまま小物になる |
ポイントは「サッカーファンの正装」にしないことです。上下をチームカラーで揃えたり、フルキットで出かけたりするのは、このスタイルの文脈とは別のものになります。あくまでユニフォームは私服の一部、という距離感が保たれているのが特徴です。
だからこそ、選ばれるシャツも変わります。現行のぴったりしたシルエットより、身幅にゆとりのある90年代の作りのほうが、そのまま私服として成立します。ここが「なぜ古いシャツなのか」という問いの、実用面での答えです。


メンズとレディースで選び方は変わりますか?
変わりません。サッカーのユニフォームに男女の区別はほとんどないからです。実際、当店に来る相談も男性女性の両方からあります。
ユニフォームは基本的にユニセックスの型で作られています。レディース専用モデルを出しているクラブもありますが、流通量は多くありません。そのため女性が着る場合も、選ぶのはメンズ表記のサイズになります。
選び方で唯一違うのはサイズの取り方です。ブロークコアはもともとゆったり着るスタイルなので、体格より大きいサイズを選ぶのが前提になります。上の写真の着用例も、女性がメンズサイズを大きめに着ています。
| 着る人 | サイズの目安 |
|---|---|
| 普段Sサイズの方 | M〜Lあたり。肩が落ちるくらいで丁度いい |
| 普段Mサイズの方 | L〜XL |
| あえて大きく着たい場合 | XL以上。90年代のシャツは元から身幅が広い |
90年代のシャツは、当時の流行でそもそも身幅が広く作られています。同じLでも現行モデルより一回り大きいことが多いので、当時物を選ぶ場合はサイズを上げすぎないほうがうまくいきます。
買取の面では、サイズだけで買取の可否を決めることはしていません。XSでも5XLでもお預かりします。ただし評価には差が出ます。L〜XLなど大きめのサイズは街着としての需要が高く、当時物は現存数も少ないため、評価が上がりやすくなります。S以下やジュニアサイズは需要が限られるため、評価は控えめになります(クラブ・年代・スポンサー・状態のほうが影響の大きい場合もあります)。
市場はどのくらいの規模になっていますか?
ヴィンテージフットボールシャツは、すでに独立した市場として成立しています。世界最大手であるイギリスのClassic Football Shirtsは、年間75万枚以上を販売し、年商5,000万ドルを超える規模にまで成長しました。
同社は2024年に米国の投資会社から3,850万ドルの資金調達を実施しており、米国市場での売上は前年比2倍に伸びています。もはや「古着の一ジャンル」ではありません。


